くものしゅの日記

子育て中の ph. D.です。専門は確率統計.情報理論等

1=0.999…の件、その4

1=0.999… (9は無限に並ぶ)
って本当?
1>0.999…
でしょ?
 
という質問に対する答えは難しい。

0.999... - Wikipedia

によると
等式 0.999… = 1 は数学者に長く受け入れられ、一般の算数・数学教育の一部であったにも拘らず、これを十分直観に反するものと見なして、疑念や拒絶反応を示す学徒もいる。このような懐疑論は、「この等式を彼らに納得させることがいかに難しいか」が数学教育の様々な研究の主題となることに正当性を与える程度に当たり前に存在している。
つまり、
1=0.999…
は納得できなくて当たり前なのです。当然、1=0.999…の証明も納得しづらいです。
 
今回は、代数的な証明の中の位取り記数法の性質を用いた証明(と、その納得しづらさ)について説明します。
 
定理:
1 = 0.999…
位取り記数法の性質を用いた証明:
x = 0.999… (1)
の両辺を10倍すると
10x=9.99… (2)
である。(2)−(1)より
9x=9
両辺9で割ると
x = 1
であるので(1)より
1 = 0.999…
 
これは正しそうですが(1)を10倍して(2)が導き出すところが納得しづらいです。10倍すると小数点の位置が
0.999… 
↓10倍
9.99…
とズレるという発想が怪しいのです。因みに、この発想を
0.999… (9が無限に右に並ぶ)
ではなく
 …999. (9が無限に左に並ぶ)
に適用するとこんな定理が成り立ちます。
 
定理:
−1 = …999.
位取り記数法の性質を用いた証明:
x = …999.0 (1)
の両辺を10倍すると
10x=…9990. (2)
である。(2)−(1)より
9x=-9
両辺9で割ると
x = -1
であるので(1)より
−1 = …999.
 
 …999. (9が無限に左に並ぶ)
は無限に大きな数のはずです。−1 = …999 が証明できるって、なんだか怪しい!……という感じで、位取り記数法による証明は納得しづらいのです。
 
実のところ、位取り記数法において
−1 = …999.
であるということは、おかしな話ではないのです。実際、…999に1を足すと、桁が繰り上がっで
 
…999+1 = …000
 
となり、0になります。1を足すと0になる数が−1であることは不自然ではないです。
 
この構造、二つを並べて比べると、分かりやすいです。
 
1-0.999…= 0.00… 右に0が続き最後に1がある?
…999+1 = …000 左に0が続き最後に1がある?
 
0がずーっと続いたあとに1がある、とも言えるし、ないとも言えるし、どっちがいいでしょうか?
 
どちらにせよ、位取り記数法の性質から
1-0.999…= 0.00…=0
…999+1 = …000=0
の両方が証明できます。
 
続く
 
読んでくれてありがとうございます。