くものしゅの日記

子育て中の ph. D.(応用数学)が書いてます

検定その4:どちらが帰無仮説で対立仮説か見分ける方法

前回、検定には役割が違う2つの仮説があり、「帰無仮説」と「対立仮説」という話をしました。
 
 
 
検定では原則として、採択されうるのは対立仮説のみであり、
帰無仮説を採択するという結論は得られません。
ですので、
 
捨て去りたい方の説を「帰無仮説
正しいと証明したい説を「対立仮説」
とする方が望ましいです。
 
例えば、
新薬を開発した会社が、「薬に効果があるということを証明したい」としましょう。
この場合、
「薬に効果がない」が捨て去りたい説で、
「薬に効果がある」が正しいと証明したい説ですよね。
ですので、
 
帰無仮説:薬に効果がない
対立仮説:薬に効果がある
 
とすると良いでしょう。
 
しかし、ここで注意して欲しいことがあるのです。
 
捨て去りたい方の説を「帰無仮説
正しいと証明したい説を「対立仮説」
というのは、必ずしも正しいとはいえないのです。
 
2つの仮説があるとき、
どちらが帰無仮説でどちらが対立仮説かを決めるのは、
別の理由があるのです。
その理由については後で説明することにします。
 
まずは、理屈はさておき、簡単な見分け方を紹介しましょう。
 
以下の用語で表されているのは帰無仮説
  • 差がない 
  • 関係ない
  • 違いがない
  • 今までと同じ
  • 変化なし
  • 効果がない
 
帰無仮説が間違い」という説が対立仮説。例えば
  • 差がある 
  • 関係ある
  • 違いがある
  • 今までと違う
  • 変化あり
  • 効果がある
 
例1:A君とB君の能力差に興味がある場合
 
帰無仮説:A君とB君に能力差はない
対立仮説:A君とB君に能力差はある
 
例2:血液型と性格の関係に興味がある場合
 
帰無仮説:血液型と性格に関係ない
対立仮説:血液型と性格に関係ある
 
ところで、
「差がない、関係ない」といった仮説をなぜ帰無仮説にしたのか?
 
ここからは、
どちらを帰無仮説にし、どちらを対立仮説にするのか、
その決め方と、そのようにする理由について解説したいと思います。
 
帰無仮説とは何であるのかを前回説明しました。
 
前回の話で今回必要なのは、
 
検定では、原則として、証拠をもとに「帰無仮説」が間違っているかどうかを判断する、
 
ということです。
証拠をもとに「帰無仮説」が間違っているか判断するのです。
調べるのは帰無仮説のみなのです。
「対立仮説」については特に調べません。
ですので、
調べやすい仮説を帰無仮説にした方が良いでしょう。
 
調べやすい仮説とは例えばこういうことです。
 
例:ある事件の犯人がどの都道府県に潜んでいるのか?
 
「犯人は東京にいる」という説があるとします。
この説を調べるには東京都内のみ調べればいいですね。
一方「犯人は東京以外にいる」という説があるとすれば、
北海道、青森、秋田、・・・、沖縄
と沢山調べないといけなくなります。
「犯人は東京にいる」という説は1つです。
一方、
「犯人は東京以外にいる」という説は
「犯人は北海道にいる」または「犯人は青森にいる」または「犯人は秋田にいる」または・・・
というように複数の説が集まったものです。
検定では、
1つの説を「単純仮説」、
複数の説が集まったものを「複合仮説」といいます。
 
  • 本当に1つの仮説である。(単純仮説)
  • たくさんの説が集まって1つの仮説になっている。(複合仮説)
検定では、証拠をもとに帰無仮説が間違っているかどうかを調べるのですが、
調べるのは楽な方が良いので、
単純仮説を帰無仮説にしたほうが良いのです。
 
帰無仮説か対立仮説かの見分け方
  • 単純仮説 → 帰無仮説
  • 複合仮説 → 対立仮説
 
文章で書くと分かり辛いですが、式で表すと分かりやすくなるかもしれません。
 
帰無仮説(単純仮説)は  =  (イコール)を使って書ける。
対立仮説は必ずしもそうではない。
 
例:
帰無仮説:犯人がいる都道府県 = 東京 (東京にいる)
対立仮説:犯人がいる都道府県 ≠ 東京 (東京以外にいる)
 
この例を頭に浮かべて、なんとなくでいいですので、
検定の流れをイメージできるようになればいいでしょう。
 
大きな世界のなかで、小さな場所を一カ所ピンポイントに絞って調べて、
そこが違う、
ということを示すことにより、
そこ以外にいる、
ということを明らかにしようとする、というイメージです。
ピンポイントに選ばれるのが「帰無仮説」というもので、
それ以外が「対立仮説」なのです。
 
 
ところで、例1をもう一度考えてみましょう。
 
例1:A君とB君の能力差に興味がある場合
 
帰無仮説:A君とB君に能力差はない
対立仮説:A君とB君に能力差はある
「能力差がない」という仮説は単純仮説です。
一方、
「能力差がある」という仮説は複合仮説です。
たとえば、
「A君の方が能力がかなり高い」または「A君の方が能力が少し上」または「A君のほうが能力が少し下」または
「A君の方が能力がかなり低い」
といった感じに複数の仮説が集まっているのです。
 
 
では復習問題。単純仮説か複合仮説かを念頭に入れて、考えてみてください。
 
問1:ある薬が効果があるかどうか、を調べる場合。
「効果がある」「効果がない」のどちらが帰無仮説?どちらが対立仮説?
 
問2:血液型と性格に関係があるかどうか、を調べる場合。
「関係ある」「関係ない」のどちらが帰無仮説?どちらが対立仮説?
 
問3:ある政策の結果、内閣の支持率が上がったかどうか、を調べる場合。
「支持率が上がった」「支持率変わらず」のどちらが帰無仮説?どちらが対立仮説?
 
 
答え
問1:帰無仮説「効果がない」、対立仮説「効果がある」
問2:帰無仮説「関係ない」、対立仮説「関係ある」
問3:帰無仮説「支持率変わらず」、対立仮説「支持率が上がった」
 
 
解説:
問1
効果がないは、
効果 = 0
と書けるので帰無仮説(単純仮説)です。一方
効果があるは、
効果 ≠ 0
と書けます。これは効果 =1かもしれないし 100かもしれませんので対立仮説(複合仮説)です。
問2
関係ないは
関係 = 0
と書けるので帰無仮説(単純仮説)です。一方
関係ありは、
関係 ≠ 0
と書けます。これは関係 =1かもしれないし 100かもしれませんので対立仮説(複合仮説)です。
問3
ある政策を実施する前と後の支持率を比較する。
支持率変わらずとは、
前の支持率 = 後の支持率
と書けるので帰無仮説(単純仮説)です。一方
支持率が上がったは
前の支持率 < 後の支持率
と書けます。これは
1%上昇(前の支持率 + 1% = 後の支持率)
かもしれないし
10%上昇(前の支持率 + 10% = 後の支持率)
かもしれませんので対立仮説(複合仮説)です。
 
今回のまとめ
  • 帰無仮説は単純仮説というのが原則。
    • 例えば「差が無い」、「関係ない」、「効果が無い」など
 
質問などがありましたら、コメントお願いします。