「幼児教育の経済学」
ジェームズ・J・ヘックマン著
著者のヘックマン氏は2000年ノーベル経済学賞受賞してる人。
著者の主張は大雑把に言うと、
幼児教育は重要ですよ、
ってことです。
もう少し詳しく言うと、
幼少期の教育介入の有無が、その後の人生に与える影響を調査した社会実験の結果、
幼児教育の重要性が分かった、ということです。
著者は
- ペリー就学前プロジェクト (123人の子供を調査)
- アベセダリアン・プロジェクト(111人の子供を調査)
という社会実験の結果から、幼少期の教育介入にかなりの効果がある
と結論付けています。
著者によると、幼児教育により非認知能力(協調性とか忍耐力とか)が向上します。
一方、IQのような知的能力についてはそれほど効果がないそうです。
この本の面白いところは、著者の考えと対立する専門家の意見が書いてあるところです。
特に、チャールズ・マレー(有名な「ベルカーブ」という本の共著者の1人)
の主張
「幼少期の教育介入に否定的な報告もある」
は考えさせられます。
マレーの主張を一部抜粋してみます。
やる気に満ちた人々による、小規模の実験的努力は成果を示す。
だが、それを綿密な設計によって大規模に再現しようとすると、
有望に思えた効果が弱くなり、そのうちすっかり消滅してしまうことが多い。
どういうことかといいますと、
- ペリー就学前プロジェクト
- アベセダリアン・プロジェクト
の結果はあくまでも、少人数かつ、やる気のある教員による成果にすぎない、
ということ。
もっと大規模な調査
- 幼児の健康と発達のプログラム IHDP(985人の子供を調査)
や、さらに大規模な
- ヘッドスタート(1960年代からアメリカで実施されている、
恵まれない未就学児童のために早期学習環境を用意するプログラム)
では幼少期の教育介入の効果に否定的な結果報告が数多くある、
とマレーは主張しています。
まとめるとこんな感じです。
- 著者のヘックマンの説: (少人数を調べた結果)幼少期の教育介入にかなりの効果がある
- チャールズ・マレーの説:(大人数を調べた結果)幼少期の教育介入の効果に否定的
この本の結論は、もちろん、著者の説が正しい、ということになっています。
つまり、幼少期の教育介入にはかなりの効果がある、ということです。
皆さんはどう思われますか?