0.999…を数列
0.9
0.99
0.999
…
の極限と考えれば
1=0.999…
が証明できるという話があります。
定理:
1=0.999…
数列の極限とみなす証明:
0.999…を数列と見なす。
0.999…は1に近づくので
0.999…=1
□
この証明には、1つ気になる点があります。それは、
0.999…は1に近づく
のところ。本当に 0.999…は1に近づきますか?
この疑問のポイントは、
2つの数が近い
の意味です。普通に考えれば、0.999…は1に近づく、は正しそうです。しかし、「近い」の意味が通常と違う場合はどうでしょう?
近いとか遠いという概念は、数学では、位相空間論で定義します。
位相空間って何?
って人も多いかと思いますが、安心してください。難しい数学は必要ありません。
位相とは、近い遠いの基準
と思ってください。何が近いか、何が遠いか、その判断基準のことを位相という、と思えば、大体オッケーです。
海の生き物、サメ、イルカ、タツノオトシゴを例に説明してみます。
見た目で言うと、サメとイルカは似てますが、サメとタツノオトシゴは似ていません。
もし、近い遠いの基準(位相)が、「見た目」の場合、
サメとイルカは近いが、サメとタツノオトシゴは遠いといえます。
ところで、サメとタツノオトシゴは魚類ですが、イルカは哺乳類です。もし、近い遠いの基準(位相)を遺伝子 DNAとすると、
サメ(魚類)とタツノオトシゴ(魚類)は近いが、サメ(魚類)とイルカ(哺乳類)は遠いといえます。
見た目という位相
- サメとイルカは近い。サメとタツノオトシゴは遠い
遺伝子 DNAという位相
- サメとタツノオトシゴは近い。サメとイルカは遠い
このように位相が違えば、何が近いか何が遠いかが変わる、ということです。
数の場合でも、近い遠いの基準(位相)が違えば、何が近いか何が遠いかが変わるのです。
0.999…と1は数の大きさは似ています。もし、近い遠いの基準(位相)を数の大きさとすると、0.999…と1は近いといえます。この場合、0.999…を数列の極限とみなすと
0.999…=1
がいえます。
と言えるでしょう。しかし、近い遠いの基準(位相)が通常と違うならば、0.999…を数列の極限とみなしても
0.999…は1になりません。
近い遠いの基準(位相)が通常とは異なる例は
に書いてあります。興味のある方は読んでみてください。
続く
読んでくれてありがとうございます。