くものしゅの日記

子育て中の ph. D.です。専門は確率統計.情報理論等

ダメなお手本で学習するとチンパンジー以下の子に育つ!?文化がヒトを進化させた

幼児教育で伸ばしたい能力っていろいろありますよね?例えば
空間認知、量概念、因果関係に関する能力
など、これらの能力をアップしたら、賢い子に育ちそうですよね。しかし、ちょっと違うのです。
ハーバード大学人類進化生物学教授
のジョセフ・ヘンリックの著書
文化がヒトを進化させた―人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉

によると、空間認知、量概念、因果関係に関する能力は、ヒトとチンパンジーで大差ありません。チンパンジーよりもずば抜けて優れているのは

社会的学習に関する能力
です。社会的学習とは、他者の影響を受けながら学習すること。例えば、周りの人を参考にしたり、人まねすることです。この「人まねする能力」が重要なのです。本から引用します。
幼児と二種類の類人猿を比較した場合に、幼児がずば抜けているのは社会的学習に関する能力だけで、空間認知、量概念、因果関係に関する能力はほぼ同等であることがわかる。
これ、幼児だけではないのです。大人も同様です。個体の能力で比較すると、ヒトはチンパンジーと比べ賢いとはいえません。ただ、「人まねする能力」で先人達の築いてきた「文化」を何千年も継承し続けた結果、チンパンジーよりも賢くなっているのです。ですので
「人まねする能力」≒ 社会的学習に関する能力
が重要なのです。
ところで、「人まねする能力」が高い子どもは賢い大人に育ちそうですが、ダメなことまでまねてしまうと困りますよね。このことについて気になることが本に書いてありましたので引用します。
手本を示すときに、「余計」なことや「無駄」なことも含めておくと、ヒトよりもチンパンジーのほうが優れた社会的学習をする。ヒトは無駄なことや不必要なことまでまねてしまうのに対し、チンパンジーはそれをきちんと無視するからである。
つまり
ダメなお手本で学習すると子どもはチンパンジー以下になるかもしれない!?
ということです。
もともと空間認知、量概念、因果関係に関する能力はチンパンジーと大差ありません。しかし、「人まねする能力(社会的学習に関する能力)」を使ってチンパンジーより圧倒的に賢くなる。だからこそ、幼児学習の際には「良いお手本」が必要ってことですね。子育ての際に注意しないといけないなぁ、と思いました。
 
最後に一言。文化がヒトを進化させたは幼児教育の本ではなく、人類進化と文化に関する本です。ハーバード大学教授による読みごたえがある本で、内容も面白いので、お勧めです。
 
最後まで読んでくれてありがとうございます。