くものしゅの日記

子育て中の ph. D.です。専門は確率統計.情報理論等

測定誤差の足し算(その2)

前回↓の続き

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前回の復習:
普通の足し算
同じものをn回足すとn倍になります。
誤差の足し算
n回足すと√n倍になります。
 
誤差がeの場合、足し算は
e+e=√2×e
e+e+e=√3×e
e+e+e+e=√4×e
・・・
のように、誤差 e を n回足すと √n×e になる、と覚えてください。
 
ところで、e を100回足したとき √100 = 10 より
e+e+・・・+e = √100×e = 10×e
となります。100回足しても10倍にしかなりません。
 
誤差の足し算の使い方を説明します。
 
例:どんな物を測定しても誤差があります。例えば、ポテトチップスのパッケージに内容量 60g と記載されていても、多少の誤差があるはずです。仮に誤差をeと書くとすると
60±e
と書けます。誤差が1グラムとは
e=1 だから、60±1 より、実際は1袋
59〜61 グラム
程度である、という意味だと思ってください。誤差が2グラムの場合は
e=2 だから、60±2 より、実際は1袋
58〜62 グラム
程度ということです。
 
では、100袋のポテトチップスの内容量は何グラムになるでしょうか?
60グラムが100袋ですので
60×100=6000 
より、パッケージ通りなら6000グラムですが、誤差があるはずです。
100袋の誤差ですので、100個分の誤差を足す必要があります。このとき、誤差の足し算をつかいます。ルート100は10ですので
e+e+・・・+e=√100×e=10×e
が100袋の誤差です。よって、ポテトチップス100個の真の内容量は
6000±10e
です。1袋の誤差が1グラム程度なら e = 1 より 
6000±10 、つまり、 5990~6010 グラム
になります。1袋の誤差が2グラム程度なら e = 2 より
6000±20 、つまり、 5980~6020 グラム
になります。
誤差の足し算は普通の足し算とは違います。
 
では、仮に、普通の足し算を使うとどうなるのか、計算してみましょう。

(ここから間違った計算です)

1袋の誤差が1グラムのとき、100袋分足すと、1を100回足すので 100 になります。つまり、誤差が100です。よって、ポテトチップス100個の内容量は
6000±100、つまり 5900~6100 グラム
程度です。

(ここまで間違い)

では、この計算(誤差を普通に足し算すること)が間違いである理由を説明します。
はじめに、本当にポテトチップス100袋を購入した場合を思い浮かべてください。パッケージ内容量が60g ですが、1グラム位は誤差があるので 59グラムであってもおかしくないとします。ところで、購入した100袋の全部が59グラムだとします。この場合はどうでしょう?100個全部が59グラムというのはおかしな話です。というのも、誤差が1グラム位ということは、61グラムのように多めの袋もあるはずだからです。
5900~6100 グラム
の5900とは、100個全部が59グラムということです。
100袋で5900グラムというのも、おかしな話なのです。
「1袋1グラム程度の誤差があるのは普通」
であっても
「100袋100グラム程度の誤差があるのはおかしい」
のです。
 
続く
 
読んでくれてありがとうございます。